30人以上の保育園児らが教室の床に座り、保育士が読む絵本の話を夢中で聞いています。傍らで見守る保育士や隣を時折気にする園児もいますが、絵本のページがめくられるとすぐに目線は戻ります。午後4時ごろ、親の迎えを待つ園児が数多く残るこども園の一風景です。

 宇都宮市五代の認定すずめこども園は平成25年4月から従来の幼稚園児に加え、保育園児の受け入れを始めました。平成27年4月に開始した子ども・子育て支援新制度で受け入れ基準が緩和されることを見越した動きで、当初は定員割れでしたが、新制度移行後は定員を30人上回る90人となりました。

 新制度では、フルタイム以外の就労や求職活動中の親でも保育園の申請が認められるようになったため、「希望する人がどっと来た。厳格な基準が緩和され、仕事をしよう、預けようという流れができた」と同園の石嶋勇園長(65)は説明します。

 宇都宮市はその傾向が顕著で、平成24年度から3年連続で年度当初の待機児童数がゼロでしたが、平成27年4月に136人となりました。県全体でも200人台から600人台に大幅に増えています。「保育園落ちた」といった匿名ブログを機に待機児童は政治問題化しましたが、実態は制度変更による需要増に供給が追いついていない状況といえます。

 とはいえ、急増する保育園児に対応しなければなりません。すずめこども園は施設の増床が可能でしたが、敷地面積が小さい街中の保育園ではそうはいきません。石嶋園長は「施設のキャパと保育士不足の2つをクリアしないといけない」と指摘します。

 待機児童解消に向けて受け入れを求める行政側と単純な定員増に二の足を踏む施設側の温度差もあります。

 保育施設に対する国や県、市など自治体からの補助金は国が定める算定基準があり、定員数が増えるほど単価分は下がります。受け入れの児童年齢などで保育士の必要数は変わり、人件費との兼ね合いなどから、業者側は単純に増やせば利益が上がるというわけではありません。栃木県こども政策課は「受け入れる施設数が増えている点からみても、定員増がマイナスにつながるわけではない」と説明します。

 栃木県内で既存の幼稚園が保育施設を新設する数は新制度移行後に24園から74園に増加しました。全体の39.2%に及び、受け入れ体制整備の流れは加速しつつあります。ただ、今は待機児童問題が注目されていますが、需要と供給が均衡した後のことを石嶋園長は危惧します。

 「少子化だし、いずれ収束する。そうなった場合にいっぱいになった施設はどうなるのか…」

 今回の参院選では、栃木選挙区のいずれの候補者も方向性としては「待機児童ゼロ」に否定的な意見はありません。ただ、「ゼロの後」にも課題は残ります。